開催日 平成22年8月7日(土)
会場 渋谷区千駄ヶ谷区民会館
開場 17:30
開会 18:00 終了予定21:00
会場整理費 500円
※ 夜時間(=夏時間)です。
演題と発表者
【前半】 大角 修 氏 十界曼荼羅と修羅の世界
【後半】 宮川 健郎 氏 オノマトペと隠喩(メタファー)
―賢治童話について最近気がついたこと、いくつか―
※「発表概要」は、下の「続を読む:」を参照願います。
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(前半) 大角 修 氏 十界曼荼羅と修羅の世界
十界曼荼羅は修羅や地獄などを仏の世界にまとめた図だ。修羅は怒りにとらわれた鬼神である。賢治は自身を「修羅」だと意識し、詩「春と修羅」には「いかりの
にがさまた青さ(略)おれはひとりの修羅なのだ」という。しかし、詩集『春と修羅』には「蠕虫舞手」のように楽しくユーモラスな作品もある。賢治の「修羅」はもっと幅広い意味をもっていたと思う。そして日本の歴史・文化のなかで「十界曼荼羅」の実際を見ると、「原体剣舞連」のようなエネルギッシュな場面が浮かび上
がってくる。そもそも十界曼荼羅は日蓮の文字曼荼羅に限らず、広く民衆に浸透した。それが法華一乗の教えから生まれたことも賢治との関係で注目したい。
(宮沢賢治研究会会員。著書に『「宮沢賢治」の誕生―そのとき銀河鉄道の汽笛が
鳴った―』『「図説」法華経大全』など。)
(後半) 宮川 健郎 氏 オノマトペと隠喩(メタファー)
―賢治童話について最近気がついたこと、いくつか―
オノマトペ(擬声語や擬態語)は、自然界など、実際の音の模写だと思っていたけれども、一種の「見立て」なのではないか。クラムボンは「かぷかぷ」笑うものに
、「どんぐりと山猫」の山は「うるうる」盛り上がるものに見立てられたのだ。「
たとえるもの」と「たとえられるもの」の類似性を足場にする隠喩(メタファー)
が、やはり、「見立て」だとすれば、賢治のメタファーと、オノマトペの創造とは同様の思考によって支えられているのかもしれない。……賢治童話について、最近
気がついたことのいくつかをお話してみます。
(武蔵野大学文学部教授、専門は日本児童文学。著書に『宮沢賢治、めまいの練習
帖』『名作童話を読む 未明・賢治・南吉』(編著)など。)