9月短歌読書会

開催日 08.gif 平成22年9月4日(土)
会場 08.gif 渋谷区神宮前区民会館
開場 08.gif 17:30
開会
08.gif 18:00 終了予定21:00

※歌稿Aと歌稿Bとを並べます。

     大正三年四月

80 どこまでも検温器のひかる水銀がのぼりゆく時目をつぶれりわれ(歌稿A)
80 検温器の/青びかりの水銀/はてもなくのぼり行くとき/目をつむれり われ
80a81 いそがしき/春なるものを/いづくまで/この水銀の/ひかり行くらん
80b81 いそがしき/春なるものを/水銀の/あゝいづちまで/ひかり行くらん(歌稿B)

81 かゞやきの地平の紺もたよりなし熱のなかなるまぼろしなれば(歌稿A)
81 地平線/かゞやく紺もなにかせん/疾(やまひ)の熱に見え来るなれば
81a82 紺青の/地平線だにいかにせん/疾み熱より/見ゆるものゆゑ
81b82 紺いろの/地平線さへ/浮びくる/やまひの/熱の/かなしからずや(歌稿B)

82 湧水のすべてをめぐりふとさめてまたつまらなく口をつぐめり(歌稿A)
82 湧水の/すべてをめぐり/ゆめさめて/またしかたなく口をつぐめり。(歌稿B)
83 白樺の老樹の上に眉白きおきな住みつゝ熱しりぞきぬ(歌稿A)
84 朝廊をふらつき行けば目はいたし木々のみどりとそらの光りに(歌稿A)
84 朝の廊下/ふらめき行けば/目は痛し/木々のみどりとそらのひかりに(歌稿B)
85 きんいろの陽が射し入れどそのひかりふらつく眼にはあまりに強し(歌稿A)
85 きんいろの/陽は射し入れど/そのひかり/弱き瞳はかへつてかなし(歌稿B)
86 学校の志望はすてぬ木々の青弱りたる眼にしみるころかな(歌稿A)
86 学校の/希望はすてん/木々のみどり/弱気まなこにしみるころかかな。(歌稿B)
87 空に光木々は緑に夏ちかみ熱疾みしのちの身のあたらしさ(歌稿A)
87 そらにひかり/木々はみどりに/夏ちかみ/熱疾みしのちのこの新しさ。(歌稿B)
88 木々の芽はあまりにも青し薄明のやまひを出でし身にしみとほり(歌稿A)

88 木々の芽は/あまりにも青し/薄明の/やまひを出でし身にしみとほり。(歌稿B)
89 われひとりねむられずねむられずまよなかの窓にかゝるは赭焦げの月(歌稿A)
89 われひとり/ねむられずねむられず/まよなかの窓にかゝるは/赭焦げの月(歌稿B)
90 ゆがみひがみ窓にかゝれる赭焦げの月われひとりねむらずげにも(歌稿A)
90 ゆがみひがみ/窓にかかれる赭こげの月/われひとりねむらず/げにものがなし。(歌稿B)
91 われ疾みてかく見るならず弦月よげに恐ろしきながけしきかな(歌稿A)
91 われ疾みて/かく見るならず/弦月よ/げに恐ろしきながけしきかな。(歌稿B)
92 まことかの鸚鵡のごとく息かすかに看護婦たちはねむりけるかな(歌稿A)
92 まことかの鸚鵡のごとく息かすかに/看護婦たちはねむりけるかな。(歌稿B)
93 星もなく赤き弦月たゞひとり窓を落ちゆくは只ごとにあらず(歌稿A)
93 星もなく/赤き弦月たゞひとり/窓を落ち行くはたゞごとにあらず。(歌稿B)
94 ちばしれるゆみはりの月わが窓にまよなかきたりて口をゆがむる(歌稿A)
94 ちばしれる/ゆみはり月の/わが窓に/まよなかきたりて口をゆがむる。(歌稿B)
95 月はよるの梢におちて見えざれどその悪相はなほわれにあり(歌稿A)
95 月はよるの/梢に落ちて見えざれど/その悪相はなほわれにあり。(歌稿B)
96 鳥さへもいまは啼かねばちばしれるかの一つ目のそらを去りしか(歌稿A)
96 鳥さへも/いまは啼かねば/ちばしれる/かの一つ目はそらを去りしか。(歌稿B)
97 よろめきて汽車を下ればたそがれの小砂利は雨にひかりけるかな(歌稿A)
97 よろめきて/汽車をくだれば/たそがれの小砂利は雨に光りけるかな。(歌稿B)

Posted by 外山正

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