12月326回例会のご案内

WordPress Data Table
※ 発表者お二人とも、会場での対面方式の発表になります。リモート配信もあります。会場はいつもの渋谷区氷川区民会館です

前半 演題と発表者 演題 「宮沢賢治と岩手大正新教育の思想圏 ―佐藤瑞彦・藤原嘉藤治・菊池武雄を中心に」 深田愛乃(ふかだ・あいの)氏
 本発表の目的は、宮沢賢治と大正新教育の思想的共鳴を、賢治が交流した岩手の教育者である佐藤瑞彦・藤原嘉藤治・菊池武雄の三人に着目して素描することである。これまでにも賢治が大正新教育の動向に関心を示したことや、農学校での教育実践に新教育的な発想が見られることは時折指摘されてきた。しかし、特に賢治が岩手の新教育の旗頭として着目した佐藤瑞彦は、賢治研究および教育学研究でも主題的には取り上げられてこなかった人物である。賢治が新教育のどのような点に関心を持ったのかを明らかにするためには、瑞彦をはじめとした岩手の教育者たちの動向を探る必要があると考える。
 そこで本発表では、賢治の実践やテクストを重点に置きながら、賢治と瑞彦、嘉藤治、武雄の具体的な活動を対照させる。瑞彦は童話や国語・図画教育、またよく知られるように嘉藤治は音楽教育、武雄は図画教育が、新教育を介した賢治との共有点のひとつをなしたと考えられる。最終的に、賢治を取り巻く新教育の思想圏では独特な芸術による人間形成への関心が共有されていたこと、しかし賢治の場合には「農」の思想を基底においた点で独自性を見せたことを仮説的に描き出したい。
(慶應義塾大学非常勤講師)
※会場における対面方式の発表です。

 
後半 演題と発表者 演題 東北アマチュア詩人による宮沢賢治評価 牧 千夏(まき・ちなつ)氏
 本発表は、 宮沢賢治の初期受容を、東北のアマチュア詩人という観点から考察する。初期受容に関する先行研究では、宮沢が新進のモダニズム詩人としての評価されたことと、全集宣伝のための過剰に評価されたことが強調されてきた。以上の先行研究にくわえ、東北のアマチュア詩人としての評価があったことを指摘したい。
 宮沢賢治の詩「産業組合青年会」は、福島県の同人詩誌『北方詩人』に掲載された。この『北方詩人』では、「産業組合青年会」掲載時から数編の宮沢賢治評が掲載された。『北方詩人』同人による評価をみると、彼らが宮沢賢治の、有名な詩人でなかった点、東北に在住していた点、アマチュア詩人であった点に注目していたことが分かる。こうした特徴は宮沢の要素でもあるが、それ以上に『北方詩人』同人が強調した彼ら自身の特徴であった。このことを踏まえ、『北方詩人』の消息欄から分かる同人の学歴、職業、詩との向き合い方などを明らかにしつつ、それがどのように宮沢賢治評価と重なるかを明らかにする。そうすることで、東北アマチュア詩人のあいだで、宮沢賢治がひとつの理想的な東北アマチュア詩人として捉えられていたことを指摘したい。
(長野工業高等専門学校 リベラルアーツ教育院 准教授)
※会場における対面方式の発表です。
 

■リモート例会のお申し込みについて/コロナ下における例会開催についての説明

Posted by 外山正

コメントを残す